自己破産手続について②

 

 自己破産手続において、当事務所でよく相談を受けるのが「車のローンがまだ残っているが、車を手放すことは出来ない」というものです。仕事でどうしても車が必要である、車がないと生活が出来ない地域に住んでいる(公共交通機関での移動が困難)といった事情を抱えている方も多いです。そこで、今回は自動車ローンと自己破産手続について詳しく説明致します。

 

(1)車検証の「所有者」欄にローン会社名が記載されている場合

 信販会社でローンを組んで自動車を購入した場合、車検証の「所有者」欄には信販会社の名前が入っており、「使用者」欄には自動車を購入した人の名前が入っていることが多いと思います。これは「所有権留保」というもので、簡単に言えば、ローンを完済するまでは自動車は信販会社の所有物であって、購入者は単に使わせてもらっているに過ぎないということです。従って自己破産手続を執った場合、信販会社は自動車を引き揚げて売却し、売却代金をローンの残債務に充当することになります(残債務は自己破産によって消滅します)。

 

(2)車検証の「所有者」欄に販売会社名が記載されている場合

  信販会社でローンを組んで自動車を購入したものの、車検証の「所有者」欄に自動車を購入した販売会社名(ディーラーの業者名)が記載されていることがあります。例えば、Aディーラーで購入した自動車の代金を、B信販会社が立て替えて支払いましたが、車検証の所有者欄に「Aディーラー」名が記載されていたとします。自動車購入者はB信販会社へローンを支払ってきましたが、のちに自己破産手続を執ることになりました。この場合、B信販会社が車の引き揚げを要求しても、車の所有者として登録されているのは「Aディーラー」であることから、B信販会社は車の引き揚げをすることが出来ません。

 そこで、(2)の場合、破産申立者は車を保有したまま自己破産をすることとなります。ローンで購入した自動車の価値が極めて低いといった事情のある場合には、破産後も車を使用し続けることが可能な事案もあります。しかし、自動車自体に売却価値が残っている場合には、同時廃止手続ではなく破産管財手続になるといった、申立者の負担が大きくなることもあり、必ずしも自動車を保有し続けられるというわけではありません。

 

 このように、信販会社でローンを組んだ借金が残っている場合に自動車を保有したまま自己破産手続を執る際は、法的に難しい問題があります。

そこで、当事務所ではご相談者様の所得や家計の内容を伺い、自己破産ではなく個人再生や任意整理手続をおすすめすることもあります。これらの手続の場合、自己破産手続より車を所有したまま他の債務を整理出来る可能性が高くなります。どのような手続がご相談者様に最も適しているか、当事務所では弁護士が相談者様の事情を詳しくお聴きし、最適なアドバイスを心がけています。

 

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