訴訟準備書面(悪意の受益者)

平成●年(●)第●号 不当利得返還請求事件
原 告   ●●●●
被 告   ●●株式会社

第1準備書面
(原告)

2020年 ●月●日

札幌地方裁判所 民事部 御中

原告訴訟代理人
弁 護 士     川 崎 久美子

第1 被告が悪意の受益者に該当すること
 1 主張・立証責任について
(1)貸金業者は、悪意の受益者に該当しないための特段の事情についての主張・立証をしない限り、悪意の受益者と推定される。
(2)貸金業者が制限超過部分を利息の債務の弁済として受領したが、その受領領につき貸金業法43条1項の適用が認められない場合には、当該貸金業者は、同項の適用があるとの認識を有しており、かつ、そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるときでない限り、法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者、すなわち民法704条の「悪意の受益者」であると推定されるのである。
(3)そして、被告からは、悪意の受益者でないことの具体的な主張・立証はない。
したがって、被告は悪意の受益者である。

2 平成21年最高裁判決との関係について
(1)(ア)平成20年(受)1728号・不当利得返還等請求事件・平成21年7月10日最高裁判所第二小法廷判決及び、(イ)平成20年(受)1729号・不当利得返還等請求事件・平成21年7月14日最高裁判所第三小法廷判決(以下、「悪意の受益者に関する平成21年判決」と言う。)においては、以下の判断が示されている。
(2)「平成18年判決(平成18年1月13日最高裁判決)が言い渡されるまでは、貸金業者において、期限の利益喪失特約下の支払であることから直ちに同項の適用が否定されるものではないとの認識を有していたとしてもやむを得ないというべきであり、貸金業者が上記認識を有していたことについては、平成19年判決の判示する特段の事情があると認めるのが相当である。したがって、平成18年判決の言渡し日以前の期限の利益喪失特約下の支払については、これを受領したことのみを理由として当該貸金業者を悪意の受益者であると推定することはできない。」
(3)そして、悪意の受益者に関する平成21年判決はあくまで、「期限の利益喪失特約下の支払であることから直ちに同項の適用が否定されるものではないとの認識を(貸金業者が)有していたとしてもやむを得ない」ということに過ぎない。
すなわち、悪意の受益者に関する平成21年最高裁判決は、「期限の利益喪失特約下におけるみなし弁済規定の適用の有無に関する認識」についての判断はしているものの、「いわゆる17条書面・18条書面に関するみなし弁済規定の適用の有無についての認識」については全く判断していないのである。
(4)したがって、悪意の受益者に関する平成21年最高裁判決は、一般的に平成18年1月13日以前の貸金業者の悪意の受益者性を否定するものでは全くない。

3 以上からすると、被告は、平成18年1月13日以前も、いわゆる「17条書面」及び「18条書面」の交付を行っていなかった。(少なくとも本件訴訟において、被告は17条書面、18条書面に関する主張・立証をしていない。)
したがって、被告にはみなし弁済の適用があるとの認識を有しており、かつ、そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情はないのである。(少なくとも特段の事情の主張・立証は被告からはない。)
以上からすると、被告は悪意の受益者に該当する。

以 上
                            

 

 

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